みなさん分離色は好きですか?
私は大好きです。
特にグレー寄りや紫寄りの暗色が大好物でして、似たような色味の絵の具はついつい手が伸びてしまいます。
ただグレーとして発売されている色は、白が混ざって不透明だったり濁ってたりで、透明感がなくちょっと苦手なのですが、分離色になると途端にニュアンスが絶妙になり、また透明感もあるので影色や黒の代わりとしてすごく使いやすいです。
以前は日本未発売の海外メーカーばかりで入手難でしたが、最近はメーカーも頑張ってくれてて代理販売や国産分離色の発売など、だいぶ手に入りやすくなりました。
おかげて私の手持ちもそこそこの数にもなりましたので、かるーく比較してみました。
分離色絵の具の比較
※4/10追記:ムーングロウとシャドウバイオレットの2色は退色していることが判明したため、画像を差し替えております。
比べてみると、ほとんどの色にウルトラマリン(PB29)が含まれているのがわかります。ダニエルスミスの2色にはビリジアン(PG18)も入ってますね。どちらも粒状化の代表格です。
大抵がそれらに茶色を組み合わせているので、青とオレンジの補色となり、グレーっぽい色になっているようですね。
ムーングロウは青緑と赤の組み合わせなので紫に、ファントムミストは赤茶色に黄土色と暖色の比率が多いので、茶色っぽく発色しているのかな?
ランダムグレーは余った顔料を全て混ぜ合わせた色なので、補色どころの騒ぎじゃないって感じ。青色が出てるのは、たぶんウルトラマリンも含まれているんでしょう。
キャラの髪色で比較
今度はイラストに使ってみた感じを比較します。
実際に塗ると、それぞれの癖が出て、また色見本とは違った雰囲気になりました。
ツンドラバイオレット・ムーングロウ・雨夜の月
実際絵に使ってみると、ムーングロウは色見本よりグレーっぽく感じますね。追記:ムーングロウ退色してました!実物はもっと赤味があります。
ツンドラバイオレットは、塗りたてはムーングロウに近い色味だったのですが、時間が経つと青と茶がどんどん分離して別物になります。質感もつぶつぶざらざら。
雨夜の月は茶色が強いせいか濃淡がつけやすく、この中では一番黒っぽく塗れます。
ランダムグレー・ファントムミスト・シャドウバイオレット
ランダムグレーは色見本だとはっきりざらざら感が出ますが、実際絵に使うとほんのりのした分離。何も考えず塗るとわかりにくいので、水を加えてあえてムラを出したほうが良い感じになりました。
ファントムミストは赤い、というかほぼほぼ茶色ですね。錆色とでもいいましょうか、暖かい雰囲気で一番馴染みが良い気がします。個人的に分離しなくても好きな色味です。
薄塗りするとシャドウバイオレットは思ったよりランダムグレーに似てて驚きました。分離するのは青緑ですが、雰囲気としては近いものがあります。無彩色に近い赤紫って感じ?
追記:シャドウバイオレット退色してました!実物はもっとオレンジ茶色よりです。
分離色は段階的な濃淡を出すのは苦手
色味に複雑さを加え、ニュアンスを出したりするのは得意な分離色。
しかし逆に、夜空などはっきり暗くしたい場合は不得手で、分離色だとムラになり濃さが出にくいです。
ホルベインのカケスと月夜のグラデーション。最上部の一番濃い部分にウルトラマリンの明るい青が分離しているため、暗さを出すことができていない。
レンブラントのペインズグレーによるグラデーション。外側が一番濃く、暗く表現できている。粒状感もない。
粒状化顔料を使っている性質上、どうしてもムラと荒いテクスチャが出てしまい、絵によっては雰囲気が崩れます。そもそもムラを楽しむものですし、ベタ塗りをしたい個所には不向きです。
分離色はこれ一色ですべてを賄えるのではなく、違う雰囲気を加えてより表現の幅が広がる、といったものなので、ちゃんと使う場所は考えましょうってことですね。
おまけ:ルリタマアザミでムーングロウっぽい色が作れる
雨夜の月とかカケスとかダスクスカイとか、日本製の紫グレーっぽい分離色は、一部で和製ムーングロウと呼ばれていたりします。
それだけ皆ダニエルスミスに憧れがあるんでしょうね。高いし…
ですが、上で比較してみた通り、意外とムーングロウって青紫っぽい色味で分離するのは青緑色。日本製って青が分離する色が多いので、塗ってみるとそこまで似てなかったりします。
ところで、ホルベインではルリタマアザミという青緑色の分離色があります。
顔料構成はウルトラマリンとオキサイドグリーンという、G系顔料同士を掛け合わせたもの。
…これ、ちょっとムーングロウから分離する青緑に似てませんか?
ムーングロウ(シャドウバイオレットも)ウルトラマリンとビリジアンが含まれてます。この青緑も、G系顔料同士の組み合わせ。
…と、いうことは、ここに赤紫系の絵の具を混ぜたら、それっぽいものが出来るんでない?
で、ためしに混色してみたのがこちら。
おお!似てる似てる!PR202とかいい感じじゃないですか?
ダニエルスミスと分離の感じは若干異なりますが、結構お手軽に近い色味を作ることができました。PR202はキナクリドンマゼンタ(PR122)に大変近い色なのでそっちで作ったほうが簡単かも
もちろん、ウルトラマリンとビリジアンを混ぜたほうがより近いものができるでしょう。ですが、ビリジアンって本当弱い色で、かなり混ぜないとウルトラマリンに負けてしまうんですよね。
既に調色してあるルリタマアザミを使うことで、その手間を無くして、安定した混色ができるのって、結構メリットじゃないでしょうか。
ルリタマアザミ自体綺麗な色ですしね。たとえ混色結果が気に入らなくても、普通に単体で使えばいいですし。
ホルベイングラニュレーションカラーも再販がきたことですし、ぜひ試してみてください。思わぬ色ができてめっちゃ楽しいです。
あと、ぶっちゃけルリタマアザミ+赤紫色の2本買っても、ダニエルスミス一本より安い…ん、ですよね…輸入品高いヨー