888お絵かき備忘録

お絵描き・水彩ノウハウ

水彩紙の湿気対策

 

※カラッカラに乾燥した季節で何言ってんだって感じですが元は夏に公開した記事なので夏場のていで読んで下さい。

 

日本の湿気って悩ましいですよね。

島国なので仕方ないところはありますが、梅雨という季節もあり、夏場は連日30度を余裕で超えて、カビの温床かってくらいべったべたの高温多湿。

さらに、近頃は春から秋にかけて、かなり長期間で夏のような気候になってきています。

7月の温度湿度計。とにかく湿度がヤバイ。

そんな環境は、水彩的にもあんまりよろしくありません。

絵を描いてても表面が全然乾かないし、作業は遅れるし意図せぬ乾きムラができる。

湿気で絵の具が溶け出し、パレットがぐちゃぐちゃになる。さらに絵の具や筆にカビが生える。

そして水彩紙が風邪を引く…

 

ん?風邪

水彩紙も"風邪"を引く?

こちらのテクスチャ、にじみが綺麗ですね。

ですが、右下になにやらザラザラとこすったような跡があります。

これは、水彩紙のサイジング(水弾き)効果が劣化して、絵の具が必要以上に染み込んでしまった状態です。

これが俗称で"風邪を引く"と表現されます。

該当部をアップしてみたところ。なんだか色鉛筆でこすったかのよう。
そして紙を裏返すと…

裏面。まるで油染みのように、ここだけ異様に絵の具が染み込んでしまったのがわかります。

水を弾かないと、こんなになってしまうんですね。

 

こちらのイラストも、一見問題ないように見えますが…

裏面になんだかカビのようなものが…

これも実は、サイジングが弱くなって、色を無駄に吸って貫通してしまったんです。

塗っても塗っても、裏面に染みちゃうと全然濃くなってくれません。発色も沈んで見えます。せっかく良い紙でも台無しになってしまいます。

こちらも風邪をひいた紙。

コットン紙なので本来は滲みがぶわっと広がるはずなのですが、吸い込みすぎて色が沈み、水彩というよりアルコールマーカーのような質感に。グラデーションもムラになっています。

水彩技法が上手く使えなくなるのも、風邪を引いた紙の特徴です。

 

この風邪引き、とくに湿気によって起こりやすくなります。

上記2例はテクスチャとリボン部分なのでなんとかなったんですが、これがもしキャラの顔などで色むらが起こってしまったら…目も当てられません。

防ぐためには、水彩紙を湿気から守り、きちんと保存しなければいけません。

水彩紙の保存用品

じゃあ、具体的になにをしたらいいのか。

基本的には、素の状態で放置しない、密閉して湿気を遮断、高温多湿の場所に置かない、なるべく長期間放置しないで早めに使い切る、あたりを守ればよいです。

ちなみに、例のテクスチャはまだ水彩始めたての頃なので知識がなく、うっかり紙をダンボールに挟んだ状態で本棚にしまい込んだ結果、こうなりました。

皆さんは最低限、密閉袋には入れてください…

密閉袋・圧縮袋

簡単なのは、こういった密閉性の袋に乾燥剤(食品用でok)と一緒に保存する方法。

100均やホムセンで手軽に入手できる反面、防湿性はそれなりなので、頻繁に乾燥剤を入れ替えなければいけません。

ちなみに、袋はいいのですが、入れる乾燥剤は100均のものはおすすめしません。結構すぐダメになります。再利用可のやつも使ってみたけど、再利用できませんでした。

クサカベ スケッチブック保存袋

クサカベから専用の商品も出てます。

スケッチブック用の保存袋で、防湿遮光のアルミ製。こちらはMサイズ。

Lサイズや、ロール紙を保存できる大きなものもあります。

私はSMサイズくらいをよく描くので、数冊くらい楽々入ります。

光も通さないので、変色なども防げてよいです。

ただ、こちら地方だと通販くらいしか入手手段がないのが難点。

ドライボックス

カメラ用のドライボックスを使うのもおすすめです。

写真はナカバヤシの11Lタイプ。湿度計もついてるので管理がしやすいです。

F4サイズなら余裕で入ります。高さがあるぶん水張りテープなんかも一緒に仕舞えるので便利。

箱型なので紙が傷ついたりするリスクが減る一方、許容量は一定でかさばると入りきらない、場所もけっこうとる、など一長一短。

お値段も少々張ります。大きなサイズを描かない人だと持て余すかもしれません。

乾燥剤

それから、どの保存方法にも私はこの乾燥剤を入れてます。

ハクバのキングドライ強力乾燥剤。

本来はカメラ用で、湿度を一定に保つため、乾燥しすぎも防げるというもの。水彩紙に湿度は天敵ですが、乾きすぎもあんまりよくないそうなので、こちらはちょうどよい感じに保持してくれます。湿気を吸うとぱんっぱんに膨れるので、交換時期がわかりやすいのもありがたい。

長梅雨のときもこれとドライボックスでしのげたので、個人的にかなり信頼してます。

 

これでなくても、食品用の乾燥剤でもないよりはずっといいです。

島国だけあって日本の湿度は異様ですからね、海外生まれの水彩紙はこの湿度は想定してないので、耐えられないものも多いのです。できるだけ湿気はとったほうがいいでしょう。

けっきょく早く使うに越したことはない

まあ、あれこれ色々やっても、描くために買った紙なので、さっさと描いちゃうのが一番いいわけですよ。

買いっぱなしで放置するとか、水張りしたまま放置するとか、描き途中で放置するとか…

とくにコットン100%はね、保水力がすごいですからね、湿気もよく吸うんです。

 

コットン紙のお試しパックが届いたときから風邪ひいてた、ってこともありました。

お店の保存状態や、輸送中に雨に濡れたり、発売から時間が経ちすぎて経年劣化してたり。

元が植物からできている以上、劣化は避けられません。

 

どうしようもない場合は、諦めて色々遊んでしまうのも手です。

最初の例のようにテクスチャ作ってしまうとか、アクリル絵の具やメディウムを盛って、そもそもサイジングとか関係ねぇ!って好き勝手塗りたくるのも楽しい。

最悪、メモ用紙にしちゃっても、捨てるよりはマシ。紙だし

 

お高いコットンの水彩紙とか、大事に大事にとっておきたい気持ちはわかります。私もそうだった。

でも、失敗より風邪引かせちゃった罪悪感のほうがつらい…!

水彩紙は描くためのもの、落書きだろうが色試しだろうが、なんでも、使い切っちゃったほうが、精神的にもいいです。ほんと。