推し色。
人はそれを指すとき、二種類の意味を持ちます。
ひとつは、この色が好き。
もうひとつは、この色が"推し"を現す色。
今回は後者のお話です。
昨今はデジタルこそ主流。推しキャラのカラーもCGが基本です。そうすると見る人の環境次第で色が違うという、ならではの現象が起きます。
PCとスマホで色が違う。youtubeとグッズで色が違う。イラストレーターによって色が違う。言い出したらキリがないです。
すると何が起こるか。ファンアートで推しの色が再現できない…！
いや、デジタルで着彩するなら、公式立ち絵からスポイト機能で色を採っちゃえばいいんです。
ですが、アナログだとこれ、単純な話ではないのです…ないのです…
水彩で”推し”の色を探す
さて、私の推しはこちら。
にじさんじライバーの「ルンルン」。いわゆるvtuberってやつですね。
公式あだ名は「るんちょま」。ファンからは略して「ちょま」と呼ばれてます。原型ないけど親愛の証です。「父ちゃん」が「ちゃん」になるようなもんです。
見た通り、人型でない、マスコットタイプの獣さん。
なので、いつも使っている、人間用のカラーとは毛色が（文字通り）違っています。
https://x.com/mo_lunlun_gu/status/1838755139680948715
https:/
Xで立ち絵・設定画も公開してくれています。
こうして見るとわかるのが、薄い青紫が大部分を占めていること。
白ベースに指し色で紫、明るい部分は薄い水色。
じゃあ、その通りに塗ってみれば…
…おや？
なんか違うぞ？？
ルンルンって本当に紫？
実は、ちょまの立ち絵から色をスポイトしてみた結果が、こちら。
青い…！？
調べてみたら、ちょまの紫に見える部分って、こんなに青寄りなんですね。
左がちょまカラー、右が濃くしたもの。
ド直球に青々してますね。これは確かに、紫とは言えないかも…
絵の具で言うと、三原色のフタロブルーより、赤味の強い青のウルトラマリンのほうが似てるかな？なら、白を混ぜて薄めてみたら、ちょまカラーになるんじゃないでしょうか。
…と、思ったんですが、今度は、なんかちょっと青すぎるような？
スポイトで確認してみたところ、なんとウルトラマリンを薄めたら、色相がもっと青寄りに変わっているのがわかりました。
絵の具の顔料って性質が複雑で、濃い所とボケあしの色が違うってことも多々あります。単純に薄めただけだと、違う色味になってしまうわけです。どうしたものか…
ウルトラマリンでも青すぎってことは、もう少し青紫っぽいほうが安定するんじゃないか、って安直な考えで検証してみることにします。
とりあえず青紫系を試してみる
と、いうわけで片っ端から絵の具を試してみることに。
ずらりと並ぶちょま、中々壮観です。
水彩紙に印刷できるプリンターなんかないので手描きですのよ。トレースに使った下絵がぼっこぼこで虫の息です。後で気づいたけど消しゴムはんこでも掘ったほうが楽だったんじゃ…
ちな、線画に使ったのはuniball-oneのひつじ雲色。ええ、ちょまにぴったりだと思って買いました。これも推し色ってやつですね…
ホルベイン ラベンダー
定番。この記事のアイキャッチ絵もこれ。
それっぽいとは思いますが、色が薄いのと、スキャンや写真でめちゃめちゃ青く映る。実際、塗ってても青すぎる気がしてて、しっくりこない…
クサカベ ラベンダー
ドットシートから拝借したので薄め。ホルベインと大差ない。少々彩度低め？
ターナー マヤバイオレット
けっこう青い気がしてたけど、ラベンダーと比べたらかなり紫強め。
彩度が低いのでグレー寄りになっちゃう。独特の質感で塗りムラも出やすい。
レンブラント ウルトラマリンバイオレット
こちらもドットシートから。
赤い。薄い。粒状化する。ジオキサジンバイオレット（PV23）に色が似てる。
どっちかっつーと、本体より首のリボンの色かな？
クサカベハルモニア パープルスピネル
持ってない絵の具も試せるドットシート様様。分離色なのでつぶつぶ。
意外と彩度低め。そして赤紫の分離主張が激しい…なんか怖い
ウィンザーアンドニュートン スマルト（デュモンブルー）
色としてはおそらく一番近い。ただ、粒状化が激しいのでムラになりがち。
ウルトラマリン系って薄めると彩度低く感じるんだよなぁ…私だけ？
シュミンケホラダム コバルトバイオレットヒュー
ウルトラマリンバイオレットよりは青い。が、赤い。
粒状化は一番激しいかも。これもリボンの色。
マイメリブルー パーマネントバイオレットブルー
PV23、いわゆるジオキサジンバイオレットの中でも青みが強め。
しかしウルトラマリンバイオレットとどっこいどっこい。お前もリボンだ。
ニッカーデザイナーズカラー ヒヤシンス
不透明水彩よりエントリー。色見本見て一番期待してたんだけど…おや、思ったより赤い？
ちょっと水で薄めたら結構紫してますね。濃いめに塗るとそれっぽく見えたんだけど…
思えば、ちょまは二次創作でよく紫色に塗られるけれど、そこでよく見かける色にそっくりかも。
皆がイメージする色には一番近いのかもしれない。
レンブラント ラベンダー
スマルトそっくり！微妙にこちらのほうが彩度高い？気のせい？
ホルベインと顔料構成は同じなのに、色はかなり違う。こちらのほうがだいぶ濃い。
白が入ると大人しくなるはずだけど粒状化も目立つ。
白を混ぜたスマルトと比較。粒子が大きい分鮮やかになるのかも？
もったりとした不透明感はあるのに、なぜか透明感も感じる…
呉竹フィス透明水彩 バイオレット（青紫）
他にも青紫系ってないかなーと探してて見つけた色。呉竹って顔彩以外にも水彩絵の具出してたのね。
個人的にかなり好きな青紫。薄めたときは紫が目立つかな…？ちょっと彩度が低い感じ。
なんとなく、脳内イメージには一番近い色な気がする。
さらに青系を追加検証
紫の名のついている色ってけっこう赤味が強いな、と感じたので、青系からもう少し探してみたところ、クサカベさんのシングルピグメントのドットシートにも、よさげな青があったので、そちらも追加してみました。
粒子細かい～
クサカベシングルピグメント ビクトリアブルーレーキ
ちょうど、ウルトラマリンをステイン系に変えたような色味。
水多めで薄めても粒子感がまったくないのが特徴。薄くしたら、なんかすっごい儚い雰囲気になった。
同じような色なのに、ウルトラマリンのような力強さがない…あれは粒子感が肝なのか？
クサカベシングルピグメント アルカリブルーレーキ
こちらはスマルトにちょっと近い。けどそちらより青っぽい。ちょま色としてかなり近いものを感じる。
粒子が細かいので薄塗りはしやすそうだけど、調べたら耐光性が恐ろしく儚い…低耐光性代表格のオペラより儚い…
薄めても発色が強いのは魅力だけど…今回はちょっと見送ります。
描いてみた
そうだ、混ぜよう。
どれもこれも微妙に不満がある。なら、足りないものを補うために、混ぜたらいいじゃないか。
とりあえず、一番気に入ったレンブラントのラベンダーと、呉竹バイオレットを混色してみました。良い感じでは？
レンブラント彩度高いな～呉竹を混ぜたおかげか、ちょっと紫に寄ってしまいましたが、荒すぎた粒子感を少し抑えてくれてるようです。
ただ、呉竹は顔料構成非公開なので、耐光性とか毒性とか何使ってるか全くわかんないんですけどね…(ノ∀`)
一応、レンブラント側の耐光性は十分なんで、退色はそんな気にならない、はず。
そして実際イラストを描いてみたのが、こちら。
紙はてのひらペーパーのランプライト。リボンはコバルトバイオレットヒュー、背景はニッカーヒヤシンスで塗りつぶしてみました。
うん、かなり脳内イメージに近い気がします。
薄めてもしっかり発色しててよいですね。やわらかく塗れば粒状感もそこまで気になりません。
ヒヤシンスもいい色ですね。ちょまにぴったり。
不透明水彩だけあって、たっぷりの水で溶いても流石の隠ぺい力。このフラットさは背景塗りにすごく適しているし、デフォルメキャラとも相性よさげ。色数揃えてキャラ塗りするのもいいかも。
実物と比べてみたけど…
１２月でルンルンとその同期、つまり所属するグループあやかき（いずれ菖蒲か杜若）がハーフアニバーサリーを迎えました！おめでとう…！
それを記念して、公式からグッズが発売されたのですが…
ついに！ファン待望のぬいぐるみが発売しましたー！！！やったー！！！！
私も即注文して無事にゲット。クリスマスに届くとか粋だね☆
アクスタなどの印刷物はロット差とかあるかもしれないけど、ぬいぐるみは毛！！
それはちょまの体毛と言っても過言でないのでは…？
て、ことはですよ？
実際の毛色がこれでわかるわけですよ？
これ、答え合わせができるのでは…！？
…青くね？
描いたイラストと比較。
やはり、青い。
下手するとホルベイン＆クサカベのラベンダーが近いまでありますね…流石にちょっと薄すぎる？
あ…そですか、肉眼よりデジタルの色相に近い感じが正解ってことですね、はい。
デジタルの鮮やかさがアナログ化すると彩度下がる、当然っすね、はい。
青紫高彩度に拘る必要なかった…
これは、レンブラントのラベンダーだと少し赤いかなぁ…呉竹抜いてもちょっと紫が強め、かも…
いや、パペットとは近いから、これはこれでヨシ！
ヨシったらヨシ！
